みんなで取り組める流域治水 

~千曲川と犀川に挟まれた更北の地を巡るラーニングコミュニティ~

写真が語りかけるもの

『昭和廿年拾月上旬の大洪水 丹波島橋下流にて堤防決壊』 

この記述は川合公民館に飾れていた写真とともに記述されていた文章である。昭和20年10月上旬に起きた長野市真島の洪水の様子を示すものであった。真島火の見櫓から撮影された写真が、多くの歴史の扉を開いた。幾重にも重なる水や地形との交渉。暮らしを重ねてきた地域の人との出会いがいつもの“当たり前”の景色を一変させた。

更北地区について

千曲川・犀川の二大河川に挟まれた更北の地は河のもたらす恩恵として肥沃で平坦な耕地・生活の舞台を得た。一方で繰り返される乱流と氾濫は、過酷な水との交渉の歴史でもあった。1966年以降長野市の合併以降、恵まれた立地条件から都市化が進行してきた。我々は、今の更北が当たり前である。青木島・真島・稲里・小島田など更北地区を構成する地名に目を向けてみると、昔のその土地の自然景観を伝えてくれる。

活動概要

我々更北中学校ものづくり部理科班は「流域治水」をテーマにし、地域方々と一緒に活動を進めてきた。更北ボランティアセンターをはじめ、更北公民館・川合公民館・更北地区住民自治協議会の方々との協働して、計6回の学びの場をつくった。

流域治水とは

「流域治水」とは、雨水が川に流入する地域(集水域)から、川の氾濫で浸水が想定される地域(氾濫域)までの、流域にかかわるすべての人が協力して行う水害対策である。

START

2023年6月24日土曜日。防災部会長 山﨑良さん・こうほくボランティアセンター 山本里江さん、合同会社PDジャパン・小山政通で更北地域の流域治水についての対話を実施しました。まず、僕たちは自分たちの“好き”を共有しました。この対話を起点に、更北地域の流域治水の活動が始まりました。

Round-table Discussion In Mashima

2023年7月15日(土)。真島町川合公民館にて、真島町にご住まいの4名(武内忠利氏、和田仁氏、伊東民興氏、北村真一郎氏)による昔の真島地区周辺の当時の水害を知る会を実施。本会では、過去に発生した水害以外にも水路に生息していた魚類や水とのつながりについて話も聞くことができた。

Kohoku's Past

2023年8月(土)午前。更北地域に長くお住まいの加藤治男氏から更北地域の三本柳地区の昔の様子についてのインタビューを行った。昔の丹波島宿のことや、犀川の河川工事の歴史や農地と堰についてなど、三本柳地区の過去の姿から犀川と千曲川が合流する地の治水の歴史までこの土地の水との関わりの歴史を知ることができた。

Fieldwork In Mashima

2023年8月。前回の座談会の話を元に、実際に現場へ行き、羽生田春樹氏をはじめ真島町のみなさんに所々で水害の歴史に関する解説をもらい、理解を深めた。

Kohoku Map Class

2023年9月16日、須坂市技術情報センター主催の科学クラブにて知り合った、地図の専門家水野博史(ジオナレッジ)さんによるサイト「みんなで作る更北の水辺を知るマップ」の使い方の講習会を更北公民館にて開催。その後、更北公民館付近の水路の温度を測り記録を行った。

Basin culture

犀川と千曲川が合流する場所は、川とともに暮らす文化作り上げてきた。対象種によってその工夫が積み重ねられてきた。また、微地形への適応とともにその道具類の形状は様々に存在する。

Final presentation

2023年11月3日。我々は更北公民館にて地域のみなさんに探究活動の成果を発表した。また、田んぼのが水を留めるはたらきをわかりやすく伝えるために、その展示模型を作成した

START

2023年6月24日土曜日。防災部会長 山﨑良さん・こうほくボランティアセンター 山本里江さん、合同会社PDジャパン・小山政通で更北地域の流域治水についての対話を実施しました。まず、僕たちは自分たちの“好き”を共有しました。この対話を起点に、更北地域の流域治水の活動が始まりました。

Round-table Discussion In Mashima

2023年7月15日(土)。真島町川合公民館にて、真島町にご住まいの4名(武内忠利氏、和田仁氏、伊東民興氏、北村真一郎氏)による昔の真島地区周辺の当時の水害を知る会を実施。本会では、過去に発生した水害以外にも水路に生息していた魚類や水とのつながりについて話も聞くことができた。

Kohoku's Past

2023年8月(土)午前。更北地域に長くお住まいの加藤治男氏から更北地域の三本柳地区の昔の様子についてのインタビューを行った。昔の丹波島宿のことや、犀川の河川工事の歴史や農地と堰についてなど、三本柳地区の過去の姿から犀川と千曲川が合流する地の治水の歴史までこの土地の水との関わりの歴史を知ることができた。

Fieldwork In Mashima

2023年8月。前回の座談会の話を元に、実際に現場へ行き、羽生田春樹氏をはじめ真島町のみなさんに所々で水害の歴史に関する解説をもらい、理解を深めた。

Kohoku Map Class

2023年9月16日、須坂市技術情報センター主催の科学クラブにて知り合った、地図の専門家水野博史(ジオナレッジ)さんによるサイト「みんなで作る更北の水辺を知るマップ」の使い方の講習会を更北公民館にて開催。その後、更北公民館付近の水路の温度を測り記録を行った。

Basin culture

犀川と千曲川が合流する場所は、川とともに暮らす文化作り上げてきた。対象種によってその工夫が積み重ねられてきた。また、微地形への適応とともにその道具類の形状は様々に存在する。

Final presentation

2023年11月3日。我々は更北公民館にて地域のみなさんに探究活動の成果を発表した。また、田んぼのが水を留めるはたらきをわかりやすく伝えるために、その展示模型を作成した

6月24日 アイデアソン

 6月24日(土)の午前9時から12時。更北中学校の理科室にて、更北ボランティアセンターの方、地域の企業の方、更北の防災の部会長の方々と、我々の好きなこと・面白いと思っていることを共有した。

※アイデアソンとは、「アイデアソン」とは、アイデアとマラソンをかけ合わせた造語で新たなアイデアの創出を目的とし、短い間で取り組むプログラムです。

好き(好奇心)×流域治水

7月15日(土) 真島の記憶

我々が住む更北の地名は 『島』がついていることが多い。

問いかけれたのは、治水と水防の違いがわかるだろうか?ということ

私たちが小さいころは、堤防はなかった。われわれ「堤防」と呼ばず、「土手」と呼んでいた。

水防というのは、だれがやっていたのか?

治水は国や県がやること

水防はここに住んでいる人たちがなんとか自分たちの地域を守ろうと、協力してなんとか水を食い止めること

地域が発展していくとともに、自分たちでなんとかしようという意識は薄れていった。

これが治水と水防の違い

地域の方にいただいた水防の足跡という資料。中には、その水防の記憶が明確に記されている。

かつての流路を教えてくれる。

われわれの世代はその動的な川を想像することができない。

7月15日長野市の川合公民館にて、真島地区の災害歴史

8月5日 午前 治水・利水の歴史

三本柳に住まう地域の方にインタビューさせていただいた。出会いとともに見え方が変わっていく地域の様相。千曲川や犀川の流域で行われてきた水との戦いの積み重ね。その上に今があることを実感する。ここでは以下の書を紹介していただいた。

1)川中島建設のあゆみ 昭和56年1月1日発行

2)明日へ繋ぐ生命の水 長野県川中島土地改良区設立50周年記念誌 平成25年 3月31日

3)これからの丹波島を創る 丹波嶋宿開設400年記念事業報告書  平成24年 2012年3月

 

上中堰の今昔

犀口三堰

小山堰

小山堰橋より小山堰をのぞむ

8月5日 午後 内水氾濫の痕跡をたどる

8月5日は真島の地域の方々に内水氾濫の歴史をたどるラーニングツアーを組んでいただいた。7月15日の話を受けて、かつての犀川の支流の旧流路の存在や、旧堤防の後、内水氾濫の場所などをご案内いただいた。

1

川合公民館に集合

更北中学校モノづくり部理科班は川合公民館に集合した。かつての犀川の支流がいくつも流れていたという資料を共有いただいてからラーニングツアーを開始する。

2

旧堤防跡

8月5日「かつてこのリンゴ畑は犀川の支流流れていました。そして、皆さんに集まっていただいた川合公民館は昔は沼でした。洪水の時にえぐれて泥がたまる場所でした。犀川の支流があって村があり、また犀川がありました。」

3

真島排水機場

千曲川左岸に位置する真島排水機場。ポンプ形式は横軸斜流ポンプ形式であり、パイプ口径が1300㎜のものが2台ある。排水能力は8.6㎥/sである。真島排水機場は昭和20年の洪水時にはなかった。千曲川の水位があがると、排水ができず、水がたまる。排水機場の管理者の安全を守るために、排水を停止する。そうすると、このあたりは水浸しになる。つまり内水氾濫が起こるということを教えていただいた。

4

土堤を切る

かつて犀川の堤防が切れた時、その水が真島地域に溜まってなかなか水がはけなかった。排水機場もなかった当時は、水がたまり続ける状態だった。千曲川は犀川と比べて低い位置にあり、現在の真島排水機場がある位置より少し下流のところで堤防を切ったとのこと。地域ではそのようなことが伝えられている。

5

水路の痕跡

犀川から流れこんだ水が抜け出るように土堤を切った後は水が千曲川の方へどんどん水が流れていった。もし、土堤を切らなければ、小島田の方まで水がついてしいたとのこと

6

旧堤防全景

アクアパル千曲を背に、川合公民館を向く。昔の堤防が見て取れる。右手に見えるリンゴ畑が犀川の支流の流路であった。晴天のもと、かつての流路に思いをはせる。

7

水防の足跡ツアー

地域の方々の手によって、災害と水防の足跡をめぐるラーニングツアーを組んでいただいた。出会いによって、その地域の景色が変わる。今僕らが見ている景色は、当たり前ではない。そんな思いを強くした。

9月16日 用水路の水温マップづくり

犀川から用水路を通って流れてくる水は我々が暮らす地域に網の目のように広がっている。水が通るこのころには、魚が泳いでいる姿を見かけることがある。夏の気温が高い日が続き、魚は住めるのだろうか?そんな素朴な疑問から用水路各所の水温を測ることにした。

地図の専門家、須坂市技術情報センター科学クラブでもおなじみのジオナレッジ水野さん。出発する前に地図の使い方のレクチャーをいただく。

チームに分かれて、地域の用水路の水温を測りに行く

チーム分け

地図の出来上がり!! 更北の水辺を見つめてみると、たくさんの生き物とも出会うことができました。

更北の水辺を知るマップ[事前勉強会のまとめ]

10月14日 地域文化資源と3Dデジタルアーカイブ

長野市立博物館にて漁具を3D化する様子

千曲川と犀川が合流するこの地は洪水による水害だけでなく、平時には多くの恵みを得ていた。人が自然地形や魚種に関与しながら様々な漁具が作られてきた。ものづくり部理科班は、博物館の収蔵庫に眠る漁具をみんなが見られるようにすべく、長野市立博物館にて漁具の3Dスキャンに取り組んだ。

参考文献

ぼくらのみんキャプデジタル博物館 ~長野市立博物館収蔵展示資料の3Dアーカイブ~ 著書 長野市立更北中学校ものづくり部理科班 協力 長野市立博物館

長野市立博物館では、「千曲川流域の漁具」という目録資料を紹介していただいた。長野県の内陸県では、内水面漁撈は重要な生計活動の一つであり、その結果として民族技術が高度に発展していた。

カジカオケ

ドジョウオケ

ハコブセ

ハコブセ

ツヅ

魚の保存箱

ヤス

投網

カジカオケ

埴科郡坂城町で使われた漁具。 入口部分が欠損もしくは未製品。カジカを捕まえるために作られたもの。割竹を使って円錐形に作られている。

CCBYND 長野市立博物館

ドジョウオケ

長野市安茂里で使われた漁具。 ドジョウ用の小型の筌。用水路などに設置した。割竹を使って円錐状に作られている。入口には簾でできた漏斗状のカエシが付き、入ると出られない仕掛けになっている。

ハコブセ

長野市真島町で使われた漁具。 ハコブセと呼ばれる。こうした型のものは入り江状になっている流れが緩やかなところに仕掛ける。中に餌を入れ、魚をおびき寄せた。 入口にアゴと呼ばれる竹簀のカエシが付いているため一方通行になっている。

ハコブセ

長野市大豆島で使われた漁具。 ハコブセと呼ばれる。こうした型のものは入り江状になっている流れが緩やかなところに仕掛ける。中に餌を入れ、魚をおびき寄せた。 入口にアゴと呼ばれる竹簀のカエシが付いているため一方通行になっている。

ツヅ

長野市安茂里で使われた漁具。 コイを狙った箱型の筌。「ツヅ」と呼ばれていた。 底は板、側面と上面は割竹で入口は欠損している。

千曲市土口で使われた漁具。 大正時代~昭和初期に使用されたと考えられる既製品の筌。ドジョウやフナ、ナマズを捕ったとされる。 入口は簾でできた漏斗状のカエシが付き、入ると出られない仕掛けになっている。餌を入れて川の中に沈め、石などで固定し魚をおびき寄せた。

魚の保存箱

長野市豊野で使われた漁具。川で生け捕りにした魚の保存用木箱。 魚を生かすため川に沈めても水が通る工夫がされている。 天井部が開閉式になっており素早く魚を入れることができる。

ヤス

長野市真島町で使われた漁具。 サケ・マスを対象としたヤス。柄を手に持ち水中の魚を突き刺して捕った。

投網

長野市松代町で使われた漁具。 網は円錐形で、裾に錘が付く。魚のいそうなところに当たりをつけ、川に向かって円形に広がるように投げ打つ。上から覆い被せるようにして魚を捕まえる。

長野市真島町で使われた漁具。 入口はアゴとよばれる竹簀のカエシが付けられ、魚が入ると出られない仕掛けになっている。 「ツヅ」と呼ばれていた。

長野市川中島町で使われた漁具。 割竹を使った円錐形の筌。隙間に入り込む魚の習性を利用するため入口の簾が漏斗状になっており、入ると出られない仕掛けになっている。 餌を入れて川の中に沈め、石などで固定し魚をおびき寄せた。

長野市穂保で使われた漁具。 割竹を使って円錐形に作られている。隙間に入り込む魚の習性を利用するため、入口には簾でできた漏斗状のカエシが付き、入ると出られない仕掛けになっている。 餌を入れて川の中に沈め、石などで固定し魚をおびき寄せた。

参考文献

千曲川犀川水系の漁撈習俗 ~近代の実態と現代における文化資源化の動き~ 安室 知 

千曲川流域の漁具 長野市立博物館収蔵資料目録 令和3年3月31日

長野市デジタルミュージアム ながの好奇心の森  https://adeac.jp/nagano-city/top/ 


11月3日 地域で発表

参考文献

上中堰の今昔

犀口三堰

小山堰

チーム分け

長野市立博物館にて漁具を3D化する様子