
夏期実力養成講座「防災・地理総合」
奈良県立高田高校での出張講義 2024年7月23日(火)14:50~16:00
今日の講座では、奈良県立高田高校付近の防災を考え、その自然災害が発生する原因を探っていきます。

担当講師の自己紹介です。
授業ではパソコン上での地図操作を行うため、奈良大学文学部地理学科の4年生3人に、補助を行ってもらいます。

講師の木村が関わった書籍です。
この中では、帝国書院の「地理総合」「地理探求」の教科書は、見たことがあるでしょうか。また、参考書「地理の研究」は本屋で見たことがあるかもしれません。

8種類(+その他)の災害が「自然災害」として日本の法律で定義されています。このうち、奈良県立高田高校付近で発生する可能性がある2つの自然災害について、今回の授業で取り上げます。
暴風と豪雨は、ハザードマップで表示できないため、今回は取り上げません。豪雪は稀ですし、現在噴火している火山は近くにありません。
地震は、前ぶれなく突然やってきます。このため、常に備えが必要です。
高田高校付近は、今後30年間で震度6弱(立っているが困難)の地震にあう確率が26%以上と、高い確率になっています。
防災や土地の成り立ちを考える上で、地図はとても重要です。現在では、web上の地図を使って、見る人それぞれの興味のある場所を表示できるようになりました。左
今日は、左に挙げたページを使っていきます。
① 奈良大SONIC
③ 今昔マップ
④ 地理院地図
狭い範囲で起こる地震(断層による直下型地震)の発生するメカニズムについて説明します。4種類の断層が示されています。
横ずれ断層は、地面に乗ったとして考えて下さい。地面に乗って、正面の地層が左に動いていれば左横ずれ断層、右に動いていれば右横ずれ断層です。
大和高田市から近い、断層(帯)を挙げています。東側の京都盆地-奈良盆地断層帯南部、北西側の生駒断層帯、南西側の(四国まで延びる)中央構造線の金剛山地東縁区間と、3つの断層帯があります。
広範囲に大地震を引き起こす海溝型地震の発生メカニズムです。南海トラフ地震(中南海トラフ地震、東海トラフ地震との連動も考えられます)は、プレートの動きが原因です。大きな津波も発生すると考えられていますが、内陸の奈良県内まではやってきません。
南海トラフ地震が発生したときの揺れについて見てみましょう。高田高校付近の最大予想震度は、どのくらいですか?
→ 奈良大SONIC から「南海トラフ巨大地震の被害想定」へ。
大きな地震が起きると「液状化現象」が発生することがあります。多くのインフラが被害を受けます。
南海トラフ大地震が発生したときに、液状化が起こる場所の予測です。高田高校付近はどうですか?
奈良大SONIC から、南海トラフ巨大地震の被害想定(液状化)を選んで下さい。表示後、色が濃くて、後ろの地図が見にくい場合には、レイヤーから透明度を調整すれば見やすくなります。
次は、洪水についてです。台風や梅雨前線により(想定される最大の)大雨が降った後、家や田畑が浸水する可能性のある場所は、ハザードマップで示されています。ここでは、外水氾濫・内水氾濫という言葉と、その違いについて知っておく必要があります。
大和高田市のハザードマップ (p11-12)には、高田高校付近の最大浸水深予測が示されています。
市町村のハザードマップは、住民にわかりやすく、きめ細かく描かれていますが、隣接する市町村は白塗りになっていることがあるので、注意が必要です。また、隣接する市町村のハザードマップとつなぎ合わせようとするとき、市町村によって凡例の色が違うこともあります。
奈良大SONIC では、浸水想定区域を広域で、同じ色の凡例で表示できます。また、pdfや紙地図と違って、東西南北への移動や拡大縮小も自在にできます。
ここまで、高田高校周辺での地震・洪水について、予想されるハザードマップを見てきました。
では、なぜ高田高校の付近は、地震時に揺れが大きく、液状化が起こりやすく、さらに洪水にも見舞われやすいのでしょうか?それは、土地の成り立ちに原因があるだろうと思って、探っていきましょう。
昔の地図を表示できる 今昔マップ というwebアプリを使ってみましょう。
左図は1910年の大和高田中心部付近、右図は現在で、左図と同じ場所を示しています。
高田高校のある場所(とその周辺)は、1910年時点では一面の田んぼです。
1910年の地図では、高田高校(二なる場所)の東側に川がありますが、現在は?
時代がすぎて、左図は1924年です。右図は先ほどと同じく、左図と同じ範囲の現在の地図です。
高田高校の前身「女学校」ができています。まだ街はずれで、田んぼの真ん中に学校が作られたことがわかります。
JR高田駅と、近鉄高田市駅をむすぶ「中央道路」は、まだ道路ではなくて・・・。
現在の「中央道路」は、1942年以前は旧・高田川でした。1935年に市街地が洪水の被害を受けたため、現在の川に付け替えられました。その後、旧・高田川は埋め立てられて、現在の中央道路になりました。
では、旧・高田川(現在の中央道路)は、天井川で水害を起こしやすい川だったことを、 地理院地図 を使って東西の断面図を描き、確認してみましょう。
中央道路には、旧・高田川の名残として、橋の欄干がいくつか残っています。この写真は、天神橋の欄干です。
そして、旧・高田川で分断されていたため、現在でも中央道路の東側は「天神橋商店街」、中央道路の西側は「天神橋西商店街」という名前になっています。
最後に、まとめです。高田高校付近の自然災害や防災を考える上で、まずはハザードマップをきっちり読み取ることが大切です。そして、地震の揺れの大きさや液状化、洪水時の浸水深を考えるときには、その土地の成り立ちを紐解くと、原因が浮かび上がってきます。そして、過去の土地の成り立ちは、昔の地図や地名などに残されていることがあります。